イケタニ、きみは他人だ
5年前とさほど変わらない生活スタイルを維持しております。意地で?ちがう。単に生地をダラダラと同じくらいの厚さで均しているだけです。
「変わったことはありますか?」
優しくなりました。
時間に、人に。ギターの弦を押さえる力も。
そうそう、ミスチルに似てると言われました。言われています。
9歳のときに「イアン・ソープに似てる」と愛媛の親戚に言われたときは正直動揺しましたよ。「いやん♡ソープ」なんてそんな、そんなね。そんな。ね。
腹に据えているのです。あなたが感じたそのままをそのまま感じ取ることなんぞ出来ないし、出来ずとも構わない、と。それなのに、自分の感じたそのままをその通り相手に受け取ってもらおうなんて都合が良すぎるじゃないか。ラリーと試合とは違うのだ。と。わきまえています。
ついさっき酒アテを買いに寄ったコンビニの店員さんの「あざした」の言い方が自分と似ていました。本当に酷似していたんです。
(ていうか、この声)
背筋が凍るのをおぼえました。
(...雄介?)
8年前に家を飛び出してからパタリと連絡がつかなくなった双子の弟、雄介。父さんも母さんも、姉貴も僕も、雄介はもう死んだと諦めていました。
まさか、と思い振り返って彼の顔をもう一度みると...。
こんなことが現実に有り得るのだろうか。マスク越しでもしっかりと確信をもてました。
コンビニを飛び出した僕の動悸は一向に収まらない。
「た............他人だ」
他人だったのです。
名札は "イケタニ"
池谷、きみは他人だ。